江戸の古民家でプチ特殊部隊体験をする会
葛城奈海
平成29年7月16日(日)、千葉県白井市の築180年の古民家で、「江戸の古民家でプチ特殊部隊体験をする会」を開催した。理事・高橋義智宅でもある同古民家での「やおよろずの森」イベント開催は、昨年に引き続き2回目。今回の講師は、海上自衛隊の特殊部隊である特別警備隊の初代先任小隊長だった当会副代表の伊藤祐靖が務める。
しかし、参加者たちの前に伊藤の姿はなかった。擬装してどこかに潜んでいる。ということで、最初のミッションは「伊藤祐靖を探せ!」。不肖葛城の案内で古民家の回りを歩き始めた参加者達。あるところで、「ここから半径10m以内にいます」の声がかかる。「え~っ!!」と戸惑いの声を上げながらも、堆肥置き場に詰まれた枝を持ち上げたり、藪の中を捜索したりし始めた。数分後、ひとりが軒下を指差す。「いました!」だが、その差された方向を見ても、伊藤を認識できない参加者も。それほど、軒下の薄暗がりに見事に一体化していた。
つづいてのミッションは、「大人のかくれんぼ」。伊藤から、まずフェイスペイント仕方を伝授される。手鏡を覗き込みながら、恐る恐る顔を着色していく参加者たち。中には、お面のようにコテコテに塗り上げている人もいる。完成すると思い思いの場所に消えていった。
鬼は、「やおよろずの森」メンバーの中で「もっとも澄んだ(?)瞳を持っている」ということで理事の松村譲裕が務める。ここからが大変だった。参加者達が驚くほど見事に消えてしまい、なかなか見つからないのだ。藪の中を分け入り、竹やぶを登ったり降りたりしながら探すのだが、一人目すらなかなか発見できない。この捜索で、松村は翌日腿が筋肉痛になったという。実は、隠れている方も大変だった。蚊の襲撃に遭っていたのだ。が、動くわけにも行かず、内心「早く見つけてくれ~」と叫んでいたという。結局、木の上にいた1名を含む3名は最後まで見つけられず、時間切れとなった。
後半は、流木を使っての火起こし。そもそも伊藤は体験的に流木が燃え易いことは知っていた。が、その理由を知ったのは、大工である高橋と出会ってから。木は中心がなかなか乾燥しない。しかし、海を漂っている間に浸透圧の関係で中心の水分が外に出て行く。そのため流木は燃え易い。この先人の知恵と特殊部隊の技の融合こそが、今回の企画の目玉だった。
うまく火を育てるためのポイントを伊藤から伝授され、参加者は、それぞれ少しずつ流木等を使って火種を育てる。中には、流木から炙り出されてきたアリの襲撃に遭う人もいたが、このときの各参加者の集中ぶりが半端ではなかった。大学生から70代まで年齢層も幅広かったが、いつしか一様に童心に返っている姿が微笑ましい。地面に腹ばいになり、夢中になって「ふーふー」息を吹きかけている人もいる。
各自が育てた火を集め、バーべキュー開始。まず焼いたのは、高橋が、この日の厨房担当も務めてくれた平さん(赤煙突代表)と伊豆大島で自ら釣ってきた魚たち。イサキ、シマアジなど種類も大きさもさまざまなため、焼けた順に振舞われる。次に、参加者でハンターの木佐さんが持参してくださったエゾ鹿。流した汗の分だけ美味しさが増したビールともよく合い、一同舌鼓を打った。
その後、屋内に移動して腰を落ち着け、伊藤監修のヘルシーな特殊部隊料理を中心としたメニューを堪能する。各自の一言スピーチで参加者の多彩ぶりも明らかになり、差し入れの日本酒も次々に空になっていった。
大の男達がすっかり少年に戻ってしまったような、きらきらとした表情が印象的な一日だった。