やおよろずの森

私たちは、日本人が古来受け継いできた自然と人間が調和する社会を広め、後世に残すため、様々な活動を行う民間団体です。

活動報告 2013年

2013/06/04 西表島中野海岸漂着ゴミ収集&調査

西表島中野海岸漂着ゴミ収集&調査

 4月22日から23日にかけて、「頑張れ日本!全国行動委員会」主催の第 13 回尖閣諸島漁業活動に参加したみなさんのうち、 34 名が、その疲れをものともせず、翌日「やおよろずの森」の呼びかけによる西表島での漂着ゴミ収集&調査活動に参加してくれた。みなさん「いずれは、尖閣で同じことを!」という想いの方々だ(と私は勝手に思っている)。

晴天の石垣島を朝 9 時半にフェリーで出港。竹富島や小浜島を窓辺に眺めながら安栄観光フェリーに揺られること 40 分ほどで、西表島北部にある上原港に到着。今回の調査をリードしてくださる西表エコプロジェクト代表の森本さんが港まで迎えに出てくれていた。 34 名ともなると安栄観光の送迎バス 1 台には乗り切らないため、 2 台に分乗して中野海岸へ。 5 分ほどで海岸近くに下車し、事前説明を行った。

漂着ゴミは、発砲スチロール・漁業ブイ・ペットボトル・電球・電池・プラスチックなどに細かく分別して回収する。それぞれ大まかに担当を決め、危険物である電球などはなるべく先に収集していく。

森本さんから「今日は海岸の右半分をきれいにしましょう」と言われて、「?」と思ったのは私ばかりではなかったらしい。これだけ人数がいるんだから、全部きれいにできるんじゃないかと思ったのだが、それが甘すぎる願望だったことが判明するまでに、そう時間はかからなかった。

トゲトゲの葉がやっかいなアダンなどが繁茂する海岸林の小道を抜けて海岸に出ると、左右に広がる白い砂浜がまぶしい。森本さんによると、この浜にはウミガメも産卵にくるそうだが、せっかく生まれた子亀が漂着物にひっかかって海までたどり着けないこともあるらしい。なんでも子亀はバックができないそうで、漂着物の壁の前でおたおたしているうちに熱中症になったり鳥に食われたりして命を落としてしまうという。また、西表島の別の浜ではお腹にビニールが詰まった鯨やお尻から魚網が出ていた鯨も打ち上げられていたとか。そう聞くと、なおのこと早く片付けなければという思いが強くなる。

海岸を一見しただけでは、ペットボトルや小型の青いブイなどがばらばらと散乱してはいるものの、そう決定的な量には思えない。それでも、しゃがんで植物の根本をのぞくと、見れば見るほどたくさんのゴミが目に入ってくる。

参加者は、照りつける太陽にじりじりと肌を焼かれながらも、プラスチック、ペットボトルなどそれぞれ担当する漂着物を拾っては、袋に入れている。意外だったのは電球の量。用途は不明ながら、ゴミの堆積した場所をちょっと探れば丸いものが次々に発見されていたし、中には蛍光灯も数本あった。発泡スチロールに関しては、以前小浜島で漂着ゴミ清掃をした折には、両手で抱えるほど大きなものがたくさんあったが、今回の場所では細かくなったものが多かった。その分、集めるのに手間がかかる。また、一抱えほどの丸くて黒いブイは、小浜島では人手が足りなくて回収を断念したが、今回は 60 個近くが集まった。特に多いと感じたのは、手のひらサイズの細長く青いブイだ。ほとんど無数にあったような気がする。そのほとんどに中国東海岸の省名である「浙江」の文字が見える。

約 1 時間ほど拾って、今度は調査活動に移行。回収したペットボトルを、まずはラベルの有無で分け、ラベルのあるものについてはバーコードの左から 3 桁までの数字で国籍別に分類していく。回収したのは全部で897本。その内訳は、以下の通りであった。

1.中国 416本 ( 84 %)

2.韓国 25本 ( 5 %)

3.台湾 23本 ( 5 %)

4.日本 17本 ( 4 %)

5.ベトナム 8本 ( 2 %)

6.マレーシア 3本 ( 1 %)

7.インドネシア 1本 ( 0.2 %)

8.国籍不明 1本 ( 0.2 %)

ラベルなし 413本

また、収集ゴミ全体の結果は以下の通り。

漁業ブイ 2.5 トン袋 

発泡スチロール 1.5 トン袋

ペットボトル 1.5 トン袋

プラスチック 1.3 トン袋

電球 4 45L 袋

ガラス 4 45L 袋

漁網・ロープ 2 45L 袋

缶 0.5 45L 袋

スプレー缶 0.5 45L 袋

その他 懐中電灯、注射器、薬瓶、ライター、ガソリン入りペットボトル、タバコ

わずか 1 時間足らずの間にこれだけの量を回収できたというのは、頭数によるところが大きい。中には軽い熱中症状態になり、息を切らしている方もおられた。前日までの尖閣往復だけでも疲労がたまっていただろうにと思うと、本当に頭が下がる。また、参加者には西表島への往復フェリー代、昼食代、そしてゴミ処理のための寄付金と併せて 6000 円をわざわざ支払っていただいている(もちろん私も)。ボランティアがゴミの運搬・処理費用まで負担せねばならないシステム自体本来問題なのだが、生憎そうしなければゴミは放置されたままになってしまうのが実情だ。これらを踏まえて参加してくれたみなさんには、心から感謝している。それでも海岸全体のゴミの量から言えば、「右半分」の「入り口付近」はなめるようにきれいになったものの、目標にしていた「右半分すべて」には遠く及ばなかった。それだけ量が半端ではないのだ。

そして、こうやって、染み入るように美しい南国の楽園を漂着ゴミが汚し、生き物たちにも害を与えているのは、尖閣も同じだ。いや、清掃活動をする人がいないだけに、船から確認できるだけでも相当数が存在している尖閣諸島の漂着ゴミは、西表島の比ではないだろう。

前日までの尖閣での漁業活動では、海保から 1 マイル以内に立ち入ることを禁じられ、参加者自身の目で漂着ゴミを確認してもらうには遠く及ばなかった。上陸はおろか漁業活動さえろくにできぬ現状にあってゴミ拾いなどかなりハードルは高いだろうが、それでも「やおよろずの森」としては、官民一体となって南西諸島の美しい自然を残すとともに、日本人が古来受け継いできた自然と人間が共生する文化を後世に残す活動のひとつとして、尖閣諸島での漂着ゴミの調査・収集活動を政府に求めていこうと考えている。

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