西表島漂着ごみインタビュー
尖閣への出港に向けて潮待ちをしていた平成 23 年 10 月 27 日、西表島に渡り、長年八重山での漂着ごみの清掃活動をしている西表エコプロジェクト代表、森本孝房さんにお話を伺った。
石垣から高速フェリーで西へ約 40 分、西表島北部の上原港にほど近い中野海岸には、海亀も産卵するという白い砂浜が続いているが、そこにペットボトルを中心としたゴミが多数打ち上げられている。
この場所は、 4 か月前、夏の観光シーズンを迎えるにあたってビーチクリーンを行い、夏の間はきれいだったそうだ。
秋になって、風向きが変わり、北風に乗って、再びごみがやってきたのだという。
発泡スチロールなども見られたが、小浜島を清掃したときのような漁具のブイが見当たらないなと思ったら、風向きが変わってからまだ一月弱ということで、軽いものしか来ていないんだそうだ。
この後、徐々にブイなど重いものも運ばれてくるという。
お話を伺っていた最中にも、北風に乗ってペットボトルがひとつ、波間を漂いながらこちらに向かってきた。
流れ着く発泡スチロールは、そのほとんどが釣った魚を入れるためのものだという。魚の味がしみ込んでいるせいだろうか、夜に来てみると、海亀やヤドカリがこの発泡スチロールを食べているというから驚いた。暑さから分解も早いが、分解したものは魚の口にも入る。それが食物連鎖でイリオモテヤマネコや人間の体内にも入ると聞いて、単に景観の問題だけは片付けられない、漂着ごみが及ぼす害の深刻さを思い知った。
草を分け、木々の根元を覗いてみると、電球、シューズ、小さなブイなどさらに多くのごみが見えてくる。そのそばで、指の先程の愛らしいヤドカリたちがちょこちょこと動き回っていた。ゴミがさらに堆積すると植物の芽が育たなくなるんだそうだ。中野海岸では、南洋の植物である、肉厚で棘のある葉を持つアダンなどが天然の海岸林となっていたが、実際、辺りに幼木は見られなかった。
掌サイズの 2 種類の小さなブイを拾って、森本さんが質問してきた。
「こちらには、海藻や貝が付いていますが、こちらには付いていません。なんでだと思いますか?」
「……漂流していた時間の長さの違いでしょうか?」
「いいえ。こちらは、鉛など重金属を多く含んでいる、つまり有毒なので、生物が付かないんです。付いている方は、無害ということです」
「 !! 」
いやはや。有害無害を本能的に見極める野生生物たちの鋭い感性にも感服するが、それにしても、漂着ごみ恐るべし、である。森本さんには、ペットボトルのバーコードを見れば生産国がわかることや、ごみに紛れて転がっていたサキシマズオウの実が、実はウルトラマンの顔のモデルであることなどなど興味深い話をたくさん伺い、また 3 日後に、西表島南部の鹿川湾でビーチクリーン活動が行われるという情報を頂いた。
一連のお話のお陰で、漂着ごみを放置してはいけないという思いが強まったのは言うまでもない。ビーチクリーン活動が盛んに行われている西表島でもこの状態なのだ。ましてや、人が立ち入ることを禁じられている尖閣諸島や如何に…… !?